強引上司のターゲット
【ホットミルク】
次の日、デスクに着いてメモに気が付く。
新庄さんからのそれは、今日は一日中外回りでそのまま直帰するという予定が書かれていた。

予定の変更はあたしと会わないためか、偶然か。

課長との変な噂だけは避けたいと思って、あの後の事を聞かれたらどんな風に答えようかとか…とにかくほとんど眠れずに悩んだあたしはホッとして全身の力が抜ける。
けれどまだやることがある。

昨日のお金返さなくちゃ。

タクシー代は頂くとしても、お釣りは返すべきだし、それに…昨日ちょっと言い過ぎたこと、謝ったほうがいいかな?と思ってる。



と言うわけで、あたしは朝から課長の様子をチラチラ伺っていた。
せめてお金だけでも返せたら思うけど、受話器片手に受け取った書類をチェックしてるような人にそんな隙はなさそう。
はぁ〜今日は無理かも、と大きく息を吐いたその時、書類にあった視線がパッとあたしに向いた。
…!!
やばいと思った。
課長に見られると、なぜか逸らせなくなるから。


案の定、グーンと離れている課長とあたしは、間にたくさんのデスクと社員を挟んで、目を合わせたままだ。

そして、またあの笑顔で微笑んだ。

新庄さんに見せたムカつく笑顔でもない。
あたしが男らしさを感じた笑顔とも違う。
昨日の朝礼で始めて笑いかけられた時の笑顔だ。
< 20 / 111 >

この作品をシェア

pagetop