好きとスキが重なった日

悠真の知られたくない過去

校長室に入ると…
篠塚蓮が私をソファーに座らせ、温かい紅茶を淹れてくれた。

もちろん、ミルクと砂糖付きでね。

私が篠塚蓮が淹れてくれた紅茶に、砂糖とミルクを入れるとスプーンでかきかきと混ぜ、二三口、口に流し込む。


「俺が淹れた紅茶どう?」


「美味しいです!はい!」


「それ、高級ブランドの紅茶なんだ
本当に味分かって言ってる?神崎さんにはまだ早かったかな…?」


「そんなことないですよ!
私こう見えて、味には敏感なんです!
だから、いつもスーパーに売っている紅茶とは一味違うなって、さっきから感じてて
それに…レモンの酸味がしゅわっと舌にきますね」


「神崎さん、食レポ向いてるんじゃない?
俺の言葉にそんなにムキになるなんて、可愛い」


「や、止めてください!
そんなことを篠塚くんに言われる為に、ここに来た訳じゃないですから」


「そうだったよな!悪いな、何か…
最後くらい、神崎さんにはいい顔したかったんだ

神崎さんには本当に感謝してるから」


「最後ってどういうことですか?
学校を辞めて、俳優業に専念するとか?」


「その話はいいんだ、気にしないでくれ!」



寂しそうにそう言いながらも、必死に話を逸らそうとしている篠塚蓮………


途中まで話したなら、最後まで話してほしいよ…。


最後ってどういうこと?
"私にいい顔したかった"って、一体何なの?



私は気になりながらも、篠塚蓮の話に耳を傾けた。

指を重ね、祈るようにゆっくりと話を進める篠塚蓮…


その顔は真剣で、何かこう強い想いが存分に伝わってきた。



糸をつたるように、私の方へ導くように、ゆっくりと渡って来る。
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