ロールキャベツ
25歳の冬

クリスマスは、ホテルの繁盛期。

イヴの夜からクリスマスの朝にかけてのカップルの山。

そんな中でイヴの日を早番で終わることが出来たのは、運が良かった。

いくら忙しいホテルでも、早番だと5時には終わることが出来る。
そこから、デートだって余裕で出来る。


「もしもし、私だけど。
もう向かってくれてるの?」
ホテルの従業員出入り口を出て電話をかける。
高鳴る胸が音をたてていた。

「うん。あと2分かな、ちょっとだけ待ってて」

「分かった。ゆっくりでいいからね」

電話口から聞こえた恋人の声が、少し上ずって聞こえたのは気のせいだろうか。
私の声も、いつもより高くなっていたかもしれない。


この日の為のワンピースは、奮発して買った。

胸元にビジューがついていて、黒のレースで全体が覆われている。
透けっぽくないから、いやらしくもないし、寧ろ大人っぽく見える。

たかが服、されど服。
それで気分が上がるなら、なんだっていい。

なるべくナチュラルに、メイク直しもして、
凝った風に見えるヘアアレンジもして。


こうして迎えるクリスマスイヴが、楽しみで仕方なかった。
うきうきして、仕事中に上の空のときだってあった。



だってこの間、プロポーズされたばかりだったから。

左手の薬指に光る、ダイヤのついた指輪がどのイルミネーションよりも綺麗に見える。


私はもうすぐ、結婚するんだ。
婚約者と、クリスマスイヴを過ごすんだ。

こんな状況で、落ち着いていることなんて出来ない。
どんなに冷たい風が吹いても、どうだって良かった。


ホテルの正面入り口に着くと、照れくさそうに笑いながら駆け寄ってくる彼の姿が目に入った。


世界で一番、幸せ…

彼の腕に手を通しながら、そんなことを考えていた。

< 2 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop