SPEED LIFE
1章 生徒手帳。
「そんでさー、このえのセンスがまぢで最高なわけよ。ね?すごくない?あー、ちょ杏都(なつ)聞いてるー?」

「あー、ごめんごめん咲(さき)。なんだっけ?」

はぁ、もういいや。とでも言うように肩を落として呆れる咲に申し訳なく感じた杏都が、話題を取り戻そうと「さき!」と声をかけると同時に「なつ!」と声をかけられた。

「なにー?なつ。」

さきは私に声をかけるとき少し首をかしげるくせがある。いつもその癖が可愛いと思い、真似したこともあるが自分がやっても首が凝ったみたいになるだけだった。

「んーん、さきからでいいや。たいした話題じゃないし。」

「ふーん、そう。いや、最近話題の後輩の話。」

「後輩!!!!?」

よく先輩ならかっこいいと話題があがるけど後輩の話題があがるのは珍しい。

「んー、陸上部なんだけどね、花城くん。」

花城くん…?
聞いたことないな。

「その、後輩くんがどう話題なわけ?」

「んー、もともとうちの学年にエースがいたじゃん?それをさ、入学早々花城くんが実力差つけて勝っちゃって。」

うちの学年は今高校二年だから、うちの学年のエースともいえばかなりのものだ。

「その、花城くん?て子、すごいんだね。でも…そんなできるとうちの陸上部の男子、いじめそうじゃない?」

「それがその逆なんだって!」

…逆?

「杏都ってわかりやすい顔するよね。逆っていうのは、なんでもできてすごいからみんな重宝しちゃって。引っ張りだこみたいよ?」

「ふーん、すごいんだね。」

「それでね、今、女子の先輩たちに花城くんが人気みたいでさあ。可愛いだのなんだのって。」

「そんなに人気なら、ちょっと見てみたいかも。」

「顔も悪くないみたいよ。」

ふーん…。

…ドンッ。

いったぁ。何?

何かが頭を捉えた。
上から落ちてきた緑の物体。

「…やだ、杏都!!!大丈夫?」

「…うん、全然。び、びっくりしただけ…。」

恐る恐る拾うとそれは、

…生徒手帳。

なんだー生徒手帳かー、笑

「わりぃ。生徒手帳落とした。」

「わ!」

びっくりした。
いきなりだから。

「あ、これ…ですか?」

「おう。わりぃ。おれ、花城。よろしく。」

「え!花城!?」

食いついたのは咲だ。

「花城だけど、何か?」

「あ、いや。えと私は浦塚杏都(うらつかなつ)。」

「生徒手帳、まぢ悪かったな。」

「あ、いぇ…。」

上履きの色…3年生?
先輩か。

それにしても
整った顔…。

「あ、じゃあ俺行くわ。」

「はい。」

花城先輩か…。
覚えておこ。
< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop