襲撃プロポーズ【短編集】




滲み出る兼ね備えた気品と優しさ。

大事に大事に育てられてきた籠の中の鳥はどこまでも美しい女性に成長した。


彼女が微笑めば、道端の花も咲くのではないかと思うほどに愛らしいその姿。


しかし、そんな麗しい姫の顔も今日ばかりは何故か曇り空だ。


眉は悲しそうに垂れ下がり和長い睫毛が涙袋に影を映す。


時折漏れる溜め息は外の天気まで変えてしまうのではないかと思えて。

今は見えない雨さえ呼んできてしまいそう。


木漏れ日の似合う彼女が抱える憂鬱の理由はただ一つ。




(…晴綱様とは、どのような殿方なのでしょうか)




そう。これから夫になる男。

結城晴綱(はるつな)のことである。


噂ではとても美男子だと聞く彼が久保姫の溜め息の原因だった。




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