記憶ノ時計
何回か角を曲がったら、食堂が目の前に見えた。


すると、ちょうど涼馬が食堂のドアを開けようとしていた。


「あ、涼馬。ヤッホー」


私が手を振ると涼馬はくるっとこっちを振り向いた。


いつも通り顔は笑っていない。


「よ、涼馬」


怜馬もヒラヒラと手を振る。


「怜馬といたのか?」


唐突に聞かれて、私は少し戸惑った。


「へ?あ、うん」


「…そうか」


そう言って食堂に涼馬が入ろうとすると、怜馬が涼馬の首に腕をガッとかけた。


「なんだよーヤキモチか?に・い・ちゃ・ん」


すると、涼馬が怜馬をキッと睨みつけた。


「お前、兄ちゃんて言うなって言ってるだろうが」


「あー、そうだった。ごめんごめん」


怜馬はハハハっと笑って涼馬から離れる。


なんで兄ちゃんて言っちゃいけないんだろう…。


少し不思議になったけど、私はあえてそれを聞かなかった。


特別な事情があるのかもしれないし。
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