ぬくもりを感じて
学校での凛花は泣いてすっきりしたせいもあるのか、書道や家庭科もわからないなりに必死に取り組んでいた。

職員室でも帰国子女でわからないこともある凛花に日本のいいところをたくさん教えてあげるようにと校長が申し渡していた。


「校長先生・・・どうしたんですか?」


「いや、朝ちょっとね。」


「何かあったんですか?」


「裏庭の池の鯉にエサをやってたら、見たんだよ。」


「何をですか?」


「いじめにあってる女の子がいてね・・・ひとり相手に5人がかりで取り囲んでいて・・・。
私が注意しにいこうかとしたら、木吹が割って入って5人に卑怯だと言ってね。

とりあえず、その場から5人はいなくなったんだが・・・木吹は5人の誰かに何かされたみたいでうずくまってた。
いじめられてた子が付き添っていて、しばらくして立って教室へ行ったみたいなんだけど、『日本なんてろくなもんじゃない。』って言っててね。

いいところを見てもらいたいんだよ。」


「そんなことがあったんですか・・・わかりました。
木吹凛花に何があったか確認してみます。」



放課後、凛花は智樹に保健室に呼び出された。


凛花が保健室に来るなり、智樹は養護の遠藤とともに体を押さえつけ、お腹の部分を見えるようにブラウスをひっぱりあげた。


「先生っ!な、何するんですか・・・きゃああ!!痛っ・・・」


「ひどくなっているじゃないか!どうして、近くに校長先生がいたのに言わなかったんだ。」


「校長先生が?」


「鯉にエサをやってるときに君がうずくまったとおっしゃってた。」


「それは・・・言いつけたらあの人が・・・戸川さんが重傷を負うことになるって。」


「それはもう犯罪だよ。いじめの度合いを超えている。」


「そんなひどいいじめが続いていたなら、何か裏がとれそうな気がするが・・・。
あっ!そういえば、3日前に保健室にきた女の子も木吹と同じとこがアザになってた。」


「遠藤先生、余罪多そうですね。」


「とにかく戸川を保護するような授業体制にして、聞きこんでみましょう。
満原先生はあの5人の担任と被害者になった生徒の担任で緊急で会議をした方がいい。」


「そうですね。凛花、今日は帰りが遅くなる。よねさんたちにもそういって、早く返してあげてくれ。」


「はい、言っておきます。」


智樹が慌てて職員室へ移動し、その後を教室へ戻ろうとする凛花だったが、保健室を出ようとしたとき遠藤に何気に質問された。


「満原先生のところに泊まってるの?」


「えっ?・・・あ、あの・・・いえ、正確には満原先生はべつにお家があって、私は母屋を借りて住んでいるだけで。
あの、本当です。お兄ちゃんの親友で、お兄ちゃんが今アメリカにいってて、留守だから・・・」
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