ぬくもりを感じて
凛花は神社の奥にある鳥居から出て、目の前にある大きな邸へと入った。


「こんな御屋敷に・・・!」


「いいから入れ。」


言われるままに邸に通されるまま、部屋で待っていると、案内してくれたむさくるしい男が現れた。


「僕は満原智樹、瑞歩とは大学が同じ研究室でそれ以来の友人だ。
3日前、瑞歩がうちにやってきてこれを君に渡すように頼まれた。」


凛花は瑞歩からの手紙を広げて読んだ。


『凛花へ・・・

留守にしていてごめん。

兄ちゃんは旅に出る。捜さないでくれ。


詳しい事情は話せるようになったら連絡するから、それまでは智樹に世話になっていてくれ。

君の力になってくれるはずだから。


両親の遺産についてだけど、弁護士に頼んであるから、担当弁護士がそっちに行ったら話をして、もらえるお金などは手にしておいてくれ。

君は頭のいい娘だけれど、日本のことは記憶が昔だろうし、不自由ばかりだと思う。

だから1か月は智樹のところで修業してから、地元の高校デビューすればいい。


それじゃ、短いけどこのへんで。
兄ちゃんのこと、恨んでるだろうな・・・。ごめんな。
どこにいても君の幸せを祈っているから。


瑞歩 』


凛花はひたすら涙がこぼれるだけだった。
声を出すこともできないくらい悔しかった。


(なんで、何もいってくれないの?
私にはわかるよ。
お兄ちゃんは何か危ないことをしようとしてる。

私を守るためいなくなったんだ・・・だけど・・・だけど私はそんなのは嫌なのに。
私だって家族なんだもん。

お父さんやお母さんがいなくなって、これからは兄妹力をあわせてがんばらなきゃって思ってここまでやってきたのに・・・。

そのお兄ちゃんまでいなくなって、どうしたらいいの?)



「そろそろしゃべってもいいかな?」


「は、はい。すみません・・・ご迷惑をおかけして。」


「いや、現時点では迷惑はさほどかかっていない。
これからきっとかかるだろうから、僕も覚悟しなきゃいけないな。」


「ぬぁ!何ですか。あなたは兄のお友達でどういう人なんですか?」


「まぁ慌てるな。それをこれから説明してやる。
僕は瑞歩と大学の研究室でいっしょだった。
それで何度か研究室に誘われたりもしたが、僕はそういう籠ったり、ひとりで研究するなんて孤独なことが嫌いでね、今は高校で教師をしている。」


「嘘です!学校の先生って・・・とくに日本の高校の先生の収入でこんな御邸には住めないわ。
それともパパがお金持ち?」


「うん、パパがお金持ちなんだよ。
だから、君は気にせず、ここに住んでいいんだ。」


「だめだよ。」


「どうして?」


「だって、パパにご挨拶しないと。あなたのパパに住まわせていただいて、なおかつ、使用人でもないのにお嬢様扱いでここで生きるなんて・・・許可をとらなきゃ!」
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