ぬくもりを感じて
奥のベッドから智樹が顔を出して凛花の前に現れた。

「僕はボディガードの教育は受けていないし、普通の生物教師だ。
きっと守るって任務だけなら不合格なんだと思う。

幸いなことに、君は厄介なものの作り方を忘れているみたいだから、とりあえず狙われることがないだろうし、普通の学生として生活してる分には、普通の生徒だから普通の生活をした方がいい。

いや、するべきだ!
とにかく、今のマンションに住んでるというように見せかけて、夜は僕の家で寝るんだ。
その方が、顔の知った使用人も多いし、僕もいるから。」


「でも、もし誰かにばれちゃったら、先生が・・・クビになっちゃう!」


「この学校の理事長は誰だ?
理事長がすぐにクビにしなければ、大丈夫。
たとえ、そういうことをチクりにきたやつがいたとしても、兄貴が適当に変化させておいてくれるよ。
実際何もないんだから、なっ!」


「でも・・・セル・・じゃなくて・・・遠藤先生はどう思うの?」


「俺はそれで賛成だ。
俺は、厄介なものを持ってる君のものを背負ってるように思われているから、今は俺の方が危ない。
君の兄貴もそうだ。

だから、大樹さんのボディガードに手伝ってもらうときがあるくらいだ。

思うように走れないせいで、ここで養護教諭をしているという事情もあるんだ。」



「そう・・・だったんだ。
ごめんね。ほんとうにごめんなさい・・・遠藤先生。
私のせいで・・・ご迷惑ばかり。」


「いいんだよ。
俺の方こそ、ご両親を守れなくてごめんな。
それと・・・君の記憶をところどころ消えさせてしまってごめん。」


「遠藤先生のせいじゃないわ。
すべては私が危ない発明をしてしまったからよね。

忘れてよかったことなら、忘れていていいのよ。
忘れてしまって・・・いいの。」


それだけ言うと、凛花はさっさと学校を出て家に向かった。

涙顔を隠しながら、自宅へ走るしかないと思った凛花だった。

「セルジュ・・・セルジュが・・・遠藤先生で、もう私のボディガードじゃないんだわ。
記憶がないのに、涙が出てしまうなんて!

私はいったい何を作って、図面を誰にも渡してないのかしら。
頭の中にあっても、思い出さなければどうしようもないのに。」


智樹に言われたとおり、夜になって凛花は智樹の家の方へと移動した。


「よかった、智樹さんはお風呂みたいだし、さっさと部屋に移動して寝ようっと。」

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