桜のキセキ



「なぁ…。あんた暇人?」



突然、後ろから声をかけられた。



驚きながらも、低くて優しい不器用そうな声に振り返った。




そこには、私と同い年くらいの茶髪の少年が微笑みながら立っていた。




照れ臭そうに、少し寂しそうに、着ているパーカーに両手を突っ込んで、笑って立っていた。



突然の出来事に戸惑い、固まっているとまた彼は笑った。



「俺、神木悠飛(かみきゆうと)。お前の名前は?」




「…………。城崎亜弥」




ボソッと小さく聞き取れないであろう声で答えた。




「宜しくな!亜弥。俺のことは悠飛で良いから」




見事に私の声は、彼に届いてたらしく宜しくまでされた。




仕方ない……。




「宜しく。」



と、ぎこちない笑顔で私は答えた。





―――――――――――――――――
――――――――――――
―――――――――




今、思えばこれは本当の運命だったのかもしれない。




もし…




神様というのが存在していたなら、今から私が向かう運命の先の希望の光。





―――――――――――――――
―――――――――――――
――――――――――――――――――――






私の思考をかき消すかのように、ザワァと風が通り抜けた。







< 10 / 16 >

この作品をシェア

pagetop