あまのじゃくな彼女【完】


いつもの小さめの自販機コーナーで少し早めの休憩を取った。
その頃にも係長はまだ戻ってこず、直接会議で合流するのだと山下さんが課長へ話しているのを聞いた。


「“黒澤 綾江”ってのは超売れっ子モデル。それに比例して、超わがままな女って噂なのよ」

由梨のいわく、黒澤綾江は何誌もの雑誌の表紙を飾る売れっ子なんだとか。モデル業だけにとどまらず、最近はドラマやバラエティにも出始めているらしい。くっきりとしたハーフ系の顔立ちに抜群のスタイル。女性ファンはもちろんだけど、その色気で男性ファンも多いのでも有名らしい。


ただ、非常にわがままなのも有名で。


衣装が気に食わない、と撮影途中で帰ったり。嫌いなモデルとは同じページに載りたくない、とそのモデルを下ろさせたり。
とにかく面倒な女らしいのだ。


「そんな女が一度断ったオファーを受けるってよっぽどの事でしょう?山下さんったらどんな手つかったのかしらねぇ」

感心するように由梨が頷く。

「まぁ、山下さんも人たらしな所あるから。地道に口説いたんじゃないの?」

「あら、それ千葉さんが妬いちゃうわね」

ぷふっと思わず笑ってしまった。これでまたしばらく、千葉さんの機嫌が悪くなってしまいそうだ。

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