あまのじゃくな彼女【完】


高級車の快適な走りも今日ばかりは眠気を誘われず。車内に緊張が走る中、車はスムーズに大通りを行く。

オフィス街を抜け住宅街へと車が入ると、そこでようやく黒澤さんが口を開いた。



「あなた、宏太の妹でしょ?」

「え?はい・・・あ、黒澤さんとも同じ高校・・・ですよね」



そういえばシュンちゃんとは高校の同級生と言っていた。それなら、同じ高校の宏兄を知っていても不思議ではない。

「黒澤ってやめて。名前でいいわ。宏太と隼人とは同じクラスだったから。あなたの家にもお邪魔したことがあるの」

あっけにとられて見逃していたけど、それで行先を言わずとも私の家が分かったわけだ。
だから私の名前に反応したのだろう。





「ねぇあなた、隼人と付き合ってるの?」

綾江さんは髪をスッとかきあげると視線を正面へと向けたまま尋ねた。



「違います!私は・・・ただの、部下です」



私は部下の1人。

そう、あなたとは違う。


何度と感じたあの既視感。
本当の記憶は、マンションで会った時でも雑誌でみた時でもない。



あの日。あの路地。
ロングヘアにピンヒールの大人の女性。
服をつかんで甘えるような関係。


秘密を知ったあの日、シュンちゃんと一緒に居た〝秘密”の相手はこの人だ。


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