あまのじゃくな彼女【完】
7* 誠

1 :



朝の冷たい空気が好きだ。

すっかり秋めいて、朝方は少し肌寒い。もっと寒くなると起きるのも億劫になるし、道場の床が冷たくツラくなる。
真夏の道場はさながら蒸し風呂で、面をつけるのもおっくうだ。その臭いもまたいただけない。

そう考えると今の季節が一番だ。


昔、合宿と称してみんなでうちに寝泊まりしたのも秋だった。

掃除して朝稽古して、やる事がすんでしまえばひたすら遊び倒した。かくれんぼで道場に隠れてたら、「道場をなんだと思ってるんだ馬鹿者っ!」とお父さんに一喝されて。拗ねて倉庫に隠れてたら、結局シュンちゃんに見つけられたんだよね。

昔っからどこに隠れても結局シュンちゃんに見つけられちゃうんだったな。



そんな事をぼんやり考えつつ、気持ちを引き締めるよう1つにまとめた髪をくいっと引き結びをきつくした。

神棚の前、二礼二拍手を済ませ深々と一礼。



顔をあげれば頭はからっぽに、まっさらな自分と対峙した。



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