あまのじゃくな彼女【完】


「正直、お前が何考えてるか分からない。何がお前を苦しめているのか、どうすれば助けてやれるのかも・・・でもな」


力の抜けた手をギュッと握りしめられた。



「俺から離れる事は・・・許さない。それだけは、いくらお前が望んでも許さない」


そう言い切ると、係長の顔が近づき唇が触れる。その形を確かめるかのようにそっと啄まれた。強く握られた手とは裏腹に、その唇は優しくて。温かい舌が口内の感触を丹念に確かめると、ゆっくりと優しく離れて行った。


深いキスは思いの外優しくて、離れた後も


ドアの向こうに去っていく背中を見送ると、途端に堪えていたものが零れ落ちた。



「もぉ・・・分かんないよ」

ぽたぽたと零れ落ちるのを拭う事も出来ず、そのまま滴が自分の手に落ちる様をぼんやり眺める。



許さないって、どうすればいいのよ。

私は傍にいちゃいけないんじゃないの?

もう・・・分かんない。



訳が分からず揺れ動く心は、さっきの暗闇とはまた違う濃いもやで覆われていた。

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