あまのじゃくな彼女【完】

「もう忘れてくださいよ!係長が言ってたように、何となくで口に出ちゃっただけで。結婚なんて当分ないです。それに係長の事、何にも知りませんし」

「そう?俺の事一番知ってるの吉村さんだと思うけど」

「え?あ、その休日モードのことですか?」


いつもの「高遠係長」は温和なイメージだ。

しかし目の前の男は、髪をサイドに流してセットし少しワイルドな感じ。シルバーフレームでいつも隠されていた二重の眼は、いつもよりキリっとした印象だ。

細身のパンツにシンプルなTシャツ、ジャケットをはおり少し袖をまくっている。
こうしてみれば“温和”、というより“野性的”の方がしっくりくる。

変わりないのは、どちらのモードであれ周囲の興味を集めていること。

カフェに入ってから、ちらちらこちらを見るおひとり様女子。2人組の女子はさっきから、私を妬ましいような値踏みするような目で見てくる。

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