イージーラブじゃ愛せない


「おつかれ、胡桃ちゃん」

「……おつかれさまです」


誰だ本当に。って、今こいつ私の事なんて呼んだ?


「脚立重そうだね。持ってあげるよ」

「結構です」

「あはは、噂通り冷たいね」


男のひとりが言ったその言葉で、私は瞬時に状況を察した。


『噂通り冷たい』……あー、成瀬先輩か。


改めて見るとそのふたりは成瀬先輩と同い年くらいだった。多分、て言うか間違いなく。こいつら成瀬先輩の友達だわ。そしてもっと間違いなく、成瀬先輩はこのふたりに私の悪い噂を吹き込んでいる。


「胡桃ちゃんがあんまりにも冷たいんで、成瀬超怒ってたよ」


やっぱり。最悪だな、成瀬先輩。こんな女々しい報復に出るなんて。


成瀬先輩にも、他人のいざこざに首を突っ込んで来るこのふたりにも、私は呆れかえってひたすらに冷ややかな表情を浮かべた。

すると、男のうちのひとりが小声で

「成瀬は怒ってたけどさ、俺、胡桃ちゃんみたいな子、好きだよ」

怖気のたつ様なイヤ~な耳打ちをしてきた。
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