黄昏の特等席
 クルエルはグレイスを渡すように使用人に言っている。

「それは僕のものだ!」
「違います!」

 突然邪魔者が来たので、クルエルはさらに怒った。

「それに触れるな! それを好きにしていいのは僕だけだ!!」
「いい加減にしてください・・・・・・」

 さっきからグレイスをもののように言っているので、怒りの感情が少しずつ膨らむ。

「傷つけることしかできないあなたに近づけたりしません」
「ふざけるな!」
「どっちが・・・・・・」

 クルエルが攻撃しようとする前に、使用人が彼に怪我を負わせて動きを止めた。
 彼の悲鳴が部屋中に響いたとき、ブライスや使用人達が部屋に入ってきた。使用人達が一人で立ち上がることができなくなったクルエルを抱える。

「おい! どういうことだ!」

 話が違うと喚き散らしているクルエルに、ブライスは鋭い視線を向ける。

「最初から彼女を渡す気なんてない。そういうことだ」

 ヴァネッサをすでに捕まえたことを言っても、クルエルにとってどうでもいい女なので、知ったこっちゃない。
 部屋の外に追い出されても、クルエルはひたすらグレイスの名前を呼び続けている。
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