六本木グラスホッパー
「ここはオレたちの縄張りだ。勝手な真似は許さねえ」


「縄張り?犬や猫じゃあるまいし。この街は誰のモンでもないだろうが」


ストリートチルドレンたちは、時に凶暴だ。
平気で殴りかかってくるし、マフィアから流された拳銃を所持している事もある。


しかし、彼らにまったく怯まないアラタは流石だった。
こうゆう時、ボクは比較的おとなしくしている。
アラタの強気な発言を静に聞いている。
だから時にボクはアラタの腰ぎんちゃくだなんて呼ばれるけれど、そんなことは気にしない。ボクがこのような状況で文句や反論をしても、迫力がないのだ。
だから、そうゆう役割はアラタに任せている。



「生意気な奴らだな」


「痛い目見なきゃわからねえみたいだ」


少年達は口々に言って、じりじりとボクたちに歩み寄ってくる。


ボクとアラタは、お互いの背中をくっつけて、少年達の顔を一瞥した。
一番太ったニットキャップの少年が、アラタの肩を掴んだ。アラタは素早くその少年の腕を掴み返し、ねじり上げる。


「ぎゃっ!」


太った少年が短い悲鳴をあげ、それが合図だったかのように他の少年達が動いた。


「こいつ!」


ひょろひょろっとした狐顔の少年がボクに殴りかかってきたので、ボクはそれをかわして素早く狐顔の後ろに回りこむと、彼の背中を軽く押した。勢い余って、狐顔は前につんのめって地面に転がった。


アラタは痛がる太った少年の腕を放して、リーダー格のふところに飛びこむと、彼の首元を押さえつけるように掴んだ。


「うぐっ」


アラタよりも一回り大きくて体格のいい少年が、苦しそうに声を漏らす。そして次の瞬間、リーダー格の表情が青ざめた。


きっとアラタの異様なまでに殺気だった目つきに圧倒されたのだろう。戦意を喪失したのか、彼は直後、うなだれた。


残りの二人は、動けないまま、その光景をぽかんと見ていた。


「もう一回言う。オレたちは人を捜しているんだ」


低い声でアラタが言った。
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