乙女たるもの恋されろ!
「……うっわ。えげつな」
「さすがに私でもどうかと思うわね」
わたしが吐き捨てると、肉食系なエリナ部長もさすがに同意を見せた。
『ほらほら選んで欲しい娘は挙手しちゃってよ。っとすげー数だな。広海もこんなに立候補いるんだから誰でもいいから選んでやれよ』
『……馬鹿いうな』
『誰でもいいんだってば。ほらちゃんとゴムも用意してあるし』
そういって渋谷くんは懐から取り出したちいさな小箱を高大に押し付ける。また女の子たちから悲鳴みたいな声が上がる。なんでこんな下品な茶番にうれしそうな声が出せるのか、同じ女子として理解にくるしむところだ。
『よせって』
『選びきれなかったら複数人でもいいからさー、なんちゃって!』
そのままなんとしても選ばせようとする渋谷くんと固辞しようとする高大の応酬が続いた。けれどついに会場からは「選べ」コールまで沸き起こり、何が何でもそうしないと収拾つかないような状況になっていた。
しばらく「え・ら・べ!え・ら・べ!」のコールの中、憎々しげに手の中のキイを睨んでいた高大はふうと深いため息を吐くと、意を決したように顔を上げた。
『お。ようやくその気になったか。で。どの娘?』
『……あれ』