椿の氷
「西垣さん、終わりました
あとはこれを職員室に届けるだけ…」

「君、ピアスホールがいっぱいだァね」


この時間が終わって欲しくない
後少しでいいから、感じていたかった
だから、そう言った
嘘ではなかった
彼女の耳には、俺が見る方だけでも、ピアスホールが四つ
しかも、三つは軟骨に開けられていた
一つは耳朶に開いていて
紅いピアスが遠慮なくぶっさしてある

この話題なら、少しの時間稼ぎにはなる
そう思って言った
案の定、闇之チャンは食い付いた

「…可笑しいでしょうか
中学生なのに、こんなに沢山の…」

「格好良いんじゃないかな
俺、怖くて開けられないし
このピアスは、凄く綺麗」


単語に、意味はなかった
ただ、ピアスの話に闇之チャンは
心なしか嬉しそうに微笑んだ

無表情な彼女
無愛想だし
お世話にも可愛げはない
でも、奏でたコントラストが美しかった
やはり、薬品のようだ




「帰りましょう、西垣さん」




「…うん、豹那」


彼女は、目を瞬かせただけ
そんな表情も、出来るんだね
嗚呼、やっぱり



「…蛇と同じくらい
君が手放せなァいよ」


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