いつでも一番星


ナツくんに引かれてから、ちょっとずつ野球に興味を持つようになった。

野球のルールブックや雑誌に目を向けたりもしたし、大して観ていなかったテレビ中継も、お父さんが観ているときに一緒に観たりしたこともある。


少しでも野球のことを知っていたい。

好きな人が好きなもの。その良さとか楽しさとか、難しさと苦労とか、全部引っくるめて受け入れたい。

そう思って今まで知ろうと頑張ったりしてみたわけだけど、まだまだそれだけでは足りなかったみたいだ。

勉強不足で今ここにいることが悔やまれる。


もっとちゃんと知りたい。知った上で、ナツくんが頑張って活躍している姿を見たい。

それでわたしも野球を心から好きになれたら、きっともっとこの恋が楽しくなる。
ナツくんの頑張る強い気持ちを、深く共感できるようになる気がした。

きみの心のそばに、寄り添うように。


「おおっ!」


感嘆するような歓呼の声が辺りに広がり、考え事をしてぼんやりしていた視線を慌ててナツくんへと定めた。

てっきり打たれてしまったのかと思ったけれど、ランナーの姿は見当たらない。バッターボックスにいた打者がベンチへ戻っていく。

南田高校ナインが軽やかな足取りでベンチを目指して駆けていき、グラウンドから出る際に一礼して戻っていくナツくんの姿が見えた。


「森山くん、立ち上がりから絶好調だね。あっという間に三者凡退で終わらせるなんて」

「えっ、もう終わったの? いつの間に……」

「そうだよ。っていうか、雫ちゃんちゃんと観てた?」


いくらルールに疎いとはいえ、さすがに私の今の反応には引っ掛かるところがあったのだろう。サトちゃんに怪訝な顔で見られてしまい、私は苦笑しながら白状した。


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