恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
ーーー出た。爽やかな顔して。頭の中は、ド低俗な男のくせに。
呆れて課長を睨み上げた。
「勝手に決めないでもらえます? 私、自分のことは、自分でなんとかします。それに出来なくても上野課長には頼りません」
課長が、ぬっと私の方へ顔を突き出す。
「そんなこと良く言えるな? 今朝、あんなにしがみついてきて、もう少しいてくれと頼んだのを忘れたのか?」
課長の言葉に私は凍りついて周りを窺った。
ーーー良かった。周りの人には聞こえてないみたい。でも……
聞こえていた唯一の人がいた。紗季だ。
低俗すぎる下品な課長の話はしたが、怖さの余りに私が課長にしがみついたことや、もう少しいてもらいたいか?と聞かれ仕方なく頷いたことは話していなかった。
ーーーまずいな。紗季も勘違いしたかな? もしかして、私も課長を好きかもしれないとか……余計なことを考えないといいんだけど。
恐る恐る不安な気持ちを抱えながら紗季を見ると、紗季はニッと微笑んだ。
「なんだ。そっかぁ。ユイカってばなんだかんだ言って……課長のこと……」
楽しそうに微笑んで見せる紗季。
ーーー出たよ。違うから、違うって紗季ってば!
「ごめんなさい。私、鈍感だから人のそういうのに気がつくのが遅くて」
言いながら立ち上がる。
ーーーえ、あっと! まさかまさかですよね? 紗季ぃ!
私は、すがるような気持ちで紗季に手を伸ばした。