恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

くちづけのあとは、知らないうちに涙がほおを伝っていたようだ。

優しく上野課長に抱きしめられ、私は立っていることしかできなかった。


「俺は、山田が好きだ。なびかない女たがらとかじゃない」


課長の胸に顔を埋めて課長の告白を聞いていたら、ますます泣けてきた。

しゃくりあげる私の背中をゆっくり撫でてくれる課長。


「俺の勘違いか? 山田も俺が好きだって思っていた」


「……」

どう答えたらいいのかわからなかった。

ーーー私を課長は、本当に好きなの?


まだ、迷っていた。自分の意思を曲げることを。好きにならないと公言していたのに、その意思を曲げたら、私はこの先意思の弱い人間になってしまいそうだ。


何にでも流されてしまいそうで怖い。


しかも、相手は上野課長だ。

「ユイカ、素直になれ」

課長の胸に両手を置いた。

思い切り押して、課長の腕の中から飛び出した私は走り出していた。


「ユイカ!」


課長の声が聞こえた。でも、振り向かないで非常階段へ向かった。

果てしなく続きそうな鉄の階段を猛スピードで走り降りた。


ーーーだめだ。私は……簡単に変われない。一度決めたことは、やり通してきた。今までずっと。




私は、迷い込んでいた。

恋という名の山に登り、あと少しで頂上というところで滑落して、木々の間を滑り暗い森の中に入り込んだ体。

やっと、立ち上がったものの、同じような木々ばかりの中でどこに行けばいいかもわからずにキョロキョロするばかり。


ーーーどこへ向かえばいいの?
私は、どうすればいい?

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