きみと世界が終わるまで


暗闇の中でも分かるそのきれいな瞳は、僕を今すぐにでも異世界に吸い込んでしまいそうなくらい透き通っていた。


「あと、20時間だね」


自分の腕につけられた淡いピンクの腕時計に目を移したあと、きみは僕を見て微笑む。


その表情は、なにを考えているのか全く分からないような微笑みだった。


「時が過ぎるのは早いなあ。私、優太と話してるときも、優太とこうして手をつないでゆっくりしているときも。ずっと願ってたのに」

「……なんて願ってたの?」

「それ、私に言わせる?絶対分かってるでしょ」


ゆりあはそう言って、ムスッと唇を尖らせて僕を冗談げに睨み付けた。


4時をまわれば夏の空もほんの少しだけ明るくなってきて、きみの表情が真夜中よりもよく分かる。


きみが僕の前に現れたときには暗くてよく見えなかったきみのパーツのひとつひとつも、より鮮明に僕の瞳に映って、本当にきみが今僕の隣にいることを実感させられた。


「……もう、優太だけ特別だよ?優太にしかこんなこと言わないんだからね」


ほっぺたを風船のように膨らませたまま、きみは僕の瞳を見つめた。


「このまま、時が止まってくれたらいいのにな」


ゆりあはくしゃっと笑う。


「これが私のお願いごと。優太と時間なんて気にせずに、ずっとずっと一緒にいられたらいいのに。そう、願ってたの」


照れたように笑っているゆりあだけど、その瞳に不安の色と悲しみの陰りがあるのは僕の気のせいなのだろうか。


いや、悲しいとか寂しいとか。


そういった感情を抱いているのは、僕の方なのかもしれない。


僕がゆりあを見てそう思うから、ゆりあのこの屈託のない笑顔も寂しそうに見えるのかもしれない。


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