浮気男に逆襲を!


「悪いけど、それは無理」



冷ややかに笑って言うと、伸平は "何で! ?" と "ああやっぱり" という相反する要素が掛け合わさった複雑な表情に切り替わる。


何この奇抜な百面相。


ついへの字になってしまう口元をまたまた引き締めるあたしに、伸平は微かに拳を震わせながら口を開いた。



「俺の気持ちがマジだって……分かってくれたんだろ? なのに何で無理なんだよ」



おぅふ。すがりモード全開ですな。


その負のオーラ伝染しそうで怖いんだけど。



「それくらい言わなくても分かるっしょ」



西洋人さながらに肩をすくめて、ちょっと小馬鹿にするようなムードで返す。


伸平は悔しそうに下唇を噛んで、だだっ子みたいにふるふると首を振った。



「嫌だ! 俺は本気なんだ、本気でお前のことが好きなんだ! そんな簡単に諦めれっかよ!」



うーん。こりゃまさかの展開だね。


天下の塚原伸平が癇癪(かんしゃく)起こしてすがり絶叫を響かせるとは…。


明日は雨が降るかも、なんて。


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