不良リーダーの懸命なる愛

許し

屋上にて。






時計の長針と短針は真上に指し始めていた。


授業中のため、静かな時を刻んでいた。



その中、屋上にひとつの影があった。


左腕には包帯が巻かれていて、アスファルトに寝そべっている理人がいた。




すると屋上のドアが開く音が聴こえてきた。



もうひとつの影ができ、理人に近づいてきた。





「来たか。ヤス。」





もうひとつの人影は、ヤスだった。



理人は体を起こし、ヤスと対等に立つ。



「理人。もう体調はいいのか?」


「あぁ。それよりもヤス。お前に聞きてぇ事がある。」


「……理人の言いたい事はわかってる。二日前のアレだろ?」


とヤスが薄い笑みをこぼした。



「仕掛けたのは、お前か?」


「…………。」


「ヤス。どうなんだよ?」


理人の視線がヤスに突き刺さる!



だがヤスはそんな理人を通り越し、
遠い目で空を見ている。




そしてポツリと呟いた。




「俺にはお前のような正攻法は思いつかなかった。ただそれだけだ。」


「ヤス……。」


「これが俺のやり方だ。お前の……ダチとしてできる、俺の最終手段だ。」


「…………。」


「あいつら全員をハメたのは、俺だ。罠に掛けて、やっても無いことをでっち上げて追放するっていうシナリオだ!……最低ダロ?」


「…………。」


「だが後悔はしてねぇ。シナリオ通りに運んだからな。……だけどな、理人。お前とはこれでコンビ解消だな!」


「…………。」


「コレはお前を裏切った事と同罪ダロ。やっちゃいけねぇ事だとは分かってたが、見てられなかったってわけ。お前と鳴瀬さんのこと。………言っておくが、他の奴らは関係ねぇからな。変に責めんなよ?俺は自分のした事にオトシマエつけるために、これから校長らに直訴しにちょっくら行ってくるゎ!……じゃあな。」


「…………。」


ヤスがその場から立ち去ろうと出口へ向かって歩きだす。






「何を直訴しに行くんだ?」





「え…。」



と、ヤスが理人に向かって振り返る!



理人は変わらずヤスを睨んでいるが、
声の調子はそれと反して、柔らかかった。



「てめぇの方が色々先走ってねぇか?今更何を言いに行くんだよ?」


「理人……。」


「それにコンビ解消だぁ?俺はてめぇとコンビ組んだ覚えなんてねぇよ!芸人じゃあるまいし。」


「だが、俺はお前に縁を切られても当然のことを…!」


「アホ。こんな事で縁なんか切れちまったら、世も末なんだよ!てめぇとは “くされ縁” だからな!今更、正攻法だとかそんなもん関係ねぇダロ!ったく。」


「……っ。」


「それに、今回はアレのお陰で助かったからな。俺も、咲希も。……どうしてお前に恨みごとを言える?」


「理人。」


「今日はヤスに礼を言いたくて呼んだ。それだけだ。」


そして理人から険しさが無くなり、
いつも通り少しすれた理人がそこに居た!


「それでも学校辞めてぇなら止めねぇぞ~。今度はもう退学は免れねぇからな!さすがに。」


と、また寝そべりながら理人はヤスに告げた。





「ハハハ。それは……正直勘弁だなっ!」


と、ヤスも理人から少し離れた場所で寝転んだ。





「なぁ。」


「なんだよ?」


「俺ら、ホモ説あったらしいぞ?鳴瀬さんの友達から聞いた。」


「はぁ!?俺とヤスが!?ゲェ~~!!!」


「ハハハッ!失礼な奴…!」



二人の肌は陽射しを浴びて、程よく焼けた。
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