不良リーダーの懸命なる愛

笑顔

そんな霧島くんに私は思わず、


「だ、だだだ大丈夫です!!ひ、一人で出来ますからっっ!お気遣いなく!!!」


と慌てて霧島くんを止めにかかる!



だ、だって。


べつに散らかしたの、霧島くんじゃないのに!



そ、それに……、



霧島くんに片付けの手伝いをさせたなんて、あのさっきの不良の先輩たちの耳に入ったら………。



!!!



マズイっ!!



とんでもない逆襲をされるんじゃないかという考えが瞬時に私の頭をよぎった!!



考えただけでも身の毛がよだつ!!!



な、なんとしてでも阻止せねばっっ!!!



「わ、私、お掃除けっこう好きなんです!だ、だから大丈夫ですよ!?」


「だけど、これは俺の仲間がやったことだから。責任は俺にある。」


うっ……。



こ、困ったな……。



どうしたもんか……と、悩んでいるなか、黙々と作業を進めていく霧島くん。



「あの、でも、本当に悪いので……!」


「いや、悪かったのはこっちだ。………ごめんな。恐かったろ?」



あ。



またこの声……。



優しい声がする。



いつだったかな?




いつか聞いたことのある、霧島くんの穏やかな声が聞こえてきた。


その声を聞いたら強張ってた肩の力がぬけ、
なぜかホッとしてしまい、それ以上何も言えなくなってしまった。






しばらくして、ようやく散らかったゴミがきれいに片付けられた!


お…終わった……!


思ってたよりも早く終わって一安心。


これも霧島くんが手伝ってくれたおかげだ。


意外と霧島くん、テキパキとこなしてたんだよね。


無駄な動きがなかったな…。



チラッと霧島くんを見た。



すると霧島くんとバチッと目が合う!!



と、霧島くんは勢いよく顔をそらした!




あ、あれ??



どうしたんだろう?




よくよく見ると、耳が赤いような気がする。




………???




あ!!


そういえば!



手伝ってくれたお礼をちゃんと言わなきゃっ!


声が震えそうになったけど、意を決して霧島くんに話しかける…!



「あああの、き、霧島くん!片付け手伝ってくれて、ありがとうございました!ほ、本当に助かりましたっ!!」


深々と頭を下げた私。


すると霧島くんは、少しだけ顔をこちらへ向けると、


「……べつに……俺が手伝いたかっただけだから……。」



え?



顔を上げて霧島くんを見る。


するとまたもや視線が合い、顔をそらされてしまった。



あ、あれ?



いったいどうしたんだろう?



それに耳だけじゃなく、なんだか顔も赤いような………??


でも赤いのは首のほうにまで広がっていて、明らかに体調の異変があるように思えてならない!



……ハッ!!




まさか!




熱があるんじゃっ!?




た、大変っ!!




一瞬怖くてためらったけど、私は霧島くんに話しかける!


「き、霧島くん!ちちちょっとお時間を頂けないでしょうか?!」


「え?!」


「少々お待ちをっっ!!」


私は急いで自分の荷物のところへ行き、鞄の中を漁った!



……あ!あった!



それは常に持ち歩いてた生理痛の薬。


でも確か、 効能に “急な発熱” って書いてあるから、大丈夫だよね?


飲まないよりはいいと思い、そのまま霧島くんのところへ持って行った!



「あ、あの!……これ、飲んだ方がいいと思います!き、霧島くん、熱があるみたいなので!」


「……は!?熱???」


霧島くんが怪訝そうにやや眉をひそめる。


「っ!!ああああの、お顔が赤いようなので、熱があるのではないかと!!よよよよろしければ、ど、どうぞ、この薬をお飲み下さいっっっ!!」



怖い!!!



怖いけど、病人を放ってはおけないよ!!



熱はバカにできないんだから!



震える手で薬を差し出す!



長いようで短い時間が過ぎていく………。



や、やっぱり、迷惑だったかな……。



そう思ったとき、霧島くんが薬をそっと受け取ってくれた!!




ほっ…。




よ、よかった。




「……俺のために、わざわざ薬を?」



私は必死にこくこくと頷く!



霧島くんは薬をジッと見ている。




そして。




「そっか。……ありがとな、俺のために心配してくれて。」



と、その時だった!




霧島くんが私の目を見てふわっと微かに笑った!!




え……。





ええぇぇえ!!!?






わっ、笑ってる!!!






私は驚きを隠せず、穴があくほど霧島くんを見てしまった!


そんな私に気づいたのか、
霧島くんはハッ!とした顔つきになり、またそっぽを向いてしまった。



「ちょっ、顔、見すぎ。」



と、霧島くんが少し慌てたように呟いた。



ハッ!!



いけない!!!



あまりにもびっくりしすぎて、凝視してしまった!!!



よくよく考えたらすごく失礼だよね!?



「ごごごごめんなさいっ!!!」



慌てて霧島くんに謝る!



すると。




「いいよ、べつに。……鳴瀬だし。」



…………え?




……今なんて??




なんだか……私の名前が聞こえたような……?!




その時、“ゴホン!” と霧島くんから咳ばらいが聞こえてきた。




「それに顔が赤いのは “熱” じゃなくて、その………な、鳴瀬と、」







キーンコーンカーンコーン





その時、18時を告げるチャイムが鳴った!


あ!!もう図書室の鍵閉めなきゃっ!!


なのに、他にやることが残ってる!


まずいよ!


さっきから唯ちゃんに頼みっぱなしだ!!


「あの!わ、私、まだ図書委員の仕事が残っているので、ししし失礼しますっ!!!」


「お、おい!?」


霧島くんにお辞儀をすると、私は急いで持ち場に戻った!



「咲希ちゃん!片付けありがとう!でもまだ本の仕分け終わらなくて…!」


「私こそ任せっきりでごめんね!大丈夫だよ、早く終わらせよっ!!」


忙しなく作業をしていて、ふと気になって霧島くんのほうを見ると、
もう彼の姿はそこにはなかった。






熱下がるといいな。


大丈夫だよね?


あの薬。



薬の期限まだ切れてないし。




そう気にしつつ、また作業に没頭するのであった……。
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