不良リーダーの懸命なる愛

負け

恐る恐る霧島くんの方を見ると……?!



え?



なぜ!??




霧島くんが可笑しそうに肩を震わせて笑っていた…!



「プククッ!そんなに必死に言い訳しちゃって……ククッ。ほんと敵わないな、鳴瀬には!負けたよ。」



ま、負けた!?



私は別に霧島くんを説得してたんであって、決して勝負をしていたわけではないんですけど!??



でも。



はあぁぁ……。


よかった……、説得できたみたい!


「しかも、“ド近眼レンズ” って……!クククッ。話の流れが全然違う方向へいくし…!ハハハ!」



うぅ…。



そ、そこを笑われちゃうと、


恥ずかしいんですけど……。



それから霧島くんはまた私と向かい合うと謝ってきた。


「さっきは怒鳴って恐い思いをさせちまって本当に悪かった!すまない。…………俺さ、鳴瀬を泣かせる奴は誰であろうと許せなくて……、だからつい勢いでカッとなっちまった……ごめんな?」


「う、ううん!こちらこそ、いつも助けてくれて感謝してます!…ありがとう。」


「……っ。」


すると霧島くんの頬が急に赤くなった!



え?



どうしたんだろ?



「い、いや、俺はべつに……。たいしたことでは…。」



なんだか少しうろたえてるような??



……でも、



とにかく殴り合いの喧嘩にならなくて良かった!!


もう今の霧島くんには、先程までの殺気が感じられなかった。


唯ちゃんはポカーンとその状況を見ていて、意識が何処かへ飛んでいってしまっているように見えた。


准平くんは咳き込みながら目を見開いて、信じられない光景を見ているような顔をしている。


そして霧島くんは再び私と目が合うと、微笑んでくれた。



笑顔の霧島くん……。




笑顔……凄く似合うな。



私も霧島くんの笑顔につられて、頬が緩んでしまった。


「……鳴瀬の笑った顔、やっぱいいな…。」



……へ?



霧島くんが慈しむような眼差しで私を見てくる…!




ドキ!




そ、そんなジッと見られてると、


さすがに恥ずかしいんですけど……!



耐えきれず私は顔を伏せてしまった。



「准平。」


すると准平くんはシャキーンと立ち上がった!


「……悪かった。俺の勘違いだったみたいだ。」


「ハイ!すみませ……………え?えぇーーーー!!??」


霧島くんの言葉を聞いて、准平くんが絶叫したっ!!


「いや、理人さん!!全部俺のせいで!!ピュア子ちゃんを泣かしたのも全部俺の…」


「鳴瀬があんなに詳細に説明してくれたんだ。その説明に俺は納得がいった…。だから今さらお前の言い訳なんて聞かねーぞ?」


「っ!!!り、理人さん……!あ、ありがとうございます!」



准平くんは霧島くんに深くお辞儀をした。



なんだか、男の友情っていいなぁ~……。



この時私は、霧島くんが不良仲間や先輩たちのみんなに慕われている意味が、
なんとなくだけど、分かったような気がした。



「ピュア子ちゃん……その……あ、ありがと。俺のこと庇ってくれて……。」


准平くんが私に “ごめん!” と謝ってきた。


「ううん。私こそ、涙なんか流しちゃって……。でも、お陰でゴミとれたよ!」


「ピュア子ちゃん……!!」



ガシッ!




え!?突然なに!!?




准平くんは、私の両手を握ってきた!


「俺さ、ピュア子ちゃんってかわいいし、小さいし、ストライクゾーンに入ってたんだけど、今日のピュア子ちゃんを見てたら、マジでイイ女なんだなって、ちょーーーーわかったっ!!」



え?え??




何の話???




話の糸口が見つからない…。



「だから俺、ピュア子ちゃんのこと、今まで以上に大好きにな…フガッ!!」


突如、准平くんの口を霧島くんが手で封じた!


「おい…。中途半端な気持ちで鳴瀬に言いよるなんて、百万年早ぇーんだよ……!」



ひぃ!!




ま、また、霧島くんに殺気が……!!



「ちがっ!!俺はほんとに、フガッ!!」


「それよりも准平、時間を見ろよ。もう行かねぇと今日の合コン、間に合わねぇぞ?」



ご、合コン!?


合コンって、初対面の男女がお付き合いを前提に集まる……っていう??



「なっ!!り、理人さんのいじわる!!なにも今言わなくてよくない?!」


「楽しみにしてたんだろ?岡山女子との合コン。ほら、早く行かねぇと間に合わねぇぞ?」


と言って、霧島くんは准平くんに微笑んだ。



な、なぜだろう。



笑顔なのに恐いと感じてしまうのは……!?


「……わ、わかったよ。じゃ、じゃあ、ピュア子ちゃん!と、図書委員さん!ごめんな!迷惑かけて。またな!」


そう言って准平くんは走って行ってしまった…。



ん……?




え!!



良くないよ!!!



准平くん、本来の目的を果たしてないし!



先生に命じられた掃除の件をすっかり忘れてしまっていたのだ……。
< 29 / 151 >

この作品をシェア

pagetop