不良リーダーの懸命なる愛

邪魔もの

翌日ーー





「まずい!遅刻だ!!」



朝から私は猛ダッシュで学校へと向かっていた。


寝坊しちゃったよー!!


もう、私の馬鹿!!



昨日はなかなか寝付けず、なぜか霧島くんの顔が思い浮かんでは消え、思い浮かんでは……

の繰り返しで、

その度に目が冴えてしまい眠れたのは夜中だった。



そして挙げ句の果てには目覚まし時計が鳴ってるのも気がつかず、今の今まで爆睡していた。


弟に起こされて、時計を見るともう家を出る時間になっていた。


はぁ~、こんな時に自転車があればな…。


自分の貯金に余裕ができたら買おうかな?!



そんな事を考えながら走っていた。






キーンコーンカーンコーン




予鈴が鳴ったときには、なんとか校門をくぐり、昇降口までやって来た!


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……。さ、さすがに朝から……ぜぇ、ぜぇ、キツイ……。」



息も絶え絶えで、やっとの思いで自分の下駄箱の扉を開ける。



すると。



何かが一気に下駄箱からドサドサと床に落下した!!



え!!


何っ!!?



びっくりしてその場から飛び退く!!




「な……に…これ。」




あまりの衝撃で、しばらく何が起きたのか理解できなかった……。



私の下駄箱から落ちてきた物。



それは。



「ゴミ……?これって……?」



空き缶や紙屑など大量のゴミが私の下駄箱に入れられていたのだ!!!



どうしてこんな……!!



すると廊下を歩いていた生徒がこっちを見てくる!


と、とにかく、考えるのは後だっ!!


片付けよう!


近くにあったゴミ箱へ急いで分別して捨てていく。






…よし!こんなもんよね!?


遅刻覚悟で片付けた結果、きれいさっぱり元通りになった。


上履きを履いて急いで自分の教室に駆けこむ!






ガラッ




教室のドアを開けると、やっぱりみんな席に着いていて先生も教壇に立っていた。


「お。鳴瀬が遅刻とは珍しいな?体調でも悪いのか?」


朝のHRが始まっていて、そんなことを担任の先生につっこまれる。


「い、いえ!ただの寝坊です…。」


「珍しいこともあるもんだな!まあ、とにかく席に着きなさい。え~っと、高橋!津久井!……」


出席をとってたみたいで、やはり私は遅刻扱いになってしまった……。



あ~ぁ。


ゴミの分別をやらなければギリギリ間に合ったのに…。



でも、アレっていったいなんだったんだろう…??



よくわからず、机の中に手を入れると……。




え!?




机の中が空っぽ!!?



教科書が入ってるはずなのに、何もない!!



どんなに手をつっこんで探してみても、中はスカスカでやけに冷たかった…。





「じゃ、HRは以上だ!」



いつの間にかHRが終わっていたけど、私は焦りと混乱で気づかなかった!



もしかして、自分でも知らず知らずロッカーの中に全部入れたのかもしれないな…。



「咲希!おはよ!今日どうした!?遅刻なんて初めてじゃない!?明日は雪かもしれんな、こりゃ~!!」


「千枝ちゃん、オーバーだって!咲希ちゃん、おはよう。寝坊なんて咲希ちゃんもするんだね。」


「ちーちゃん……唯ちゃん……。」


「ん?咲希……ちょっと?なんか変じゃない?顔色悪いよ?!」


「ほんと!顔が真っ青だよ?!朝ごはん食べてきた?!」



だ、駄目だ!心配かけらんない!



「あの、ちょっと……、ロッカー見てくるね!」


そう言って立ち上がると、廊下にある生徒用のロッカーへ。


ダイヤル式の鍵をしてあるから、もし教科書があればロッカーの中にあるはず!




しかし……。




や、やっぱり、数学と現代文…それに生物の教科書が無い!!


しかもノートも!



やっぱり、机に入れておいた物が無くなってる……。



愕然とするばかりで、ただその場に立ち尽くすしかなくて……。



どうして!?


なんで無いの!?


私、家に持ち帰ってはいないし……。


やっぱり机の中に入れっぱなしだったよ!



じゃあ、誰かが間違えて使ってるのかな?!



でも……そんな事ってあるのかな!?


私の名前だってちゃんと書いてあるし……。



考えを巡らせていくけど、やっぱり無くなった原因がわからない…!!



あ!!


そういえば一時間目、数学の授業だ!!


悩んでる場合じゃないよ!


誰かに教科書借りて……




「おはよ、咲希。どした?ボーッとして?」



え……。




近くから声がすると思って振り向くと、
私のすぐ隣に霧島くんが立っていた!!!



「ぎゃあっ!!」



突然の登場と近さに驚き、変な悲鳴を出してしまった……。


「ハハッ。スゲえよな、その反応。毎度のことだけどやっぱ飽きねぇー!」


霧島くんは弾ける笑顔で私を見て笑っている。



霧島くん。



今日も会えた。



そう思うと、鼓動が速まる…!



な、なんだろ!?



この緊張感は!??



べ、べつに霧島くんに何もされてないのに、霧島くんの姿を見ただけで変に意識しちゃって……!


「俺、朝っぱらから体育でさ。めんどーだけどサボりが多いからたまには出ないとな。」


「あ!そ、そ、そうなんだ!私は数学……、」



ハッ!!そうだ!!



教科書っ!!



「霧島くん!あのっ、」


「ん?どした?」


「あの、もし良ければ数学の…」




するとそこへ!




「オッハヨ!!理人ぉ!朝から理人に会えるなんてラッキー!」


いやに甲高い声が割って入ってきた!!



あ……!



あの子って…笹原さん?



霧島くんの腕にしがみついて、愛らしい顔で霧島くんに微笑みかける。


「おい。昨日も言っただろ…。俺にまとわりつくなって。何度言えばわかんだよっ。」


そんな霧島くんは急に疲労感満載の顔になってしまった……。


「なによぉ。べつにまとわりついて無いじゃナイ?ただ理人に触ってるだけだもん~!」


あ……。


本当だ。



でも腕が胸に当たってる!





ズキン





!?




なんだろ…。


まただ。



なんか嫌だな……。


「咲希、そういえば何か言いかけたな?どした?」



あ!そ、そうだ!!



「あ、あのね、数学…」


「理人おぉ~!!!!おねがいがあるんだけど~、数学の教科書貸して?アタシ数学の教科書忘れちゃって~。数学、一時間目なの!ね?貸して!?」



あ……。


かぶっちゃった。



残念。


「ンデ俺が。他のヤツに借りれば?」


え!?


断るの早っ!!


「おねがい!!もう時間ないし、貸して?ね!?」


笹原さんが必死に、でもなんだか凄く焦ってて、霧島くんにお願いしている…。


「……ったく。仕方ねぇな。一回ダケだ。」


「ありがと!やっぱり理人大好きッ!」


「だからひっつくなって!……咲希、俺こいつに教科書貸してやらなきゃなんねぇから、急いで行って戻ってくるから!したら、話の続き…」


「あ!ううん!たいしたことじゃないから、大丈夫だよ!?霧島くんもこの後、体育でしょ?頑張ってね。」


「咲希……。」


「理人!!!きょ・う・か・しょ!!!はやくぅ!」


「チッ。いいところなのに……。じゃ、またな。」


そう言って霧島くんは背を向け、手をヒラヒラとさせながら行ってしまった。



もう片方の手は、笹原さんに握られながら……。




霧島くん、行っちゃった……。


でも、朝から会えたな。



もしかして……、私に会いに来てくれたのかな?


ふとそんな事を思ってしまう。



わっ!!


私はなんて自意識過剰なコトを!!!



で、でも!



もしそうなら、いいのにな……。




彼の背中をもう一度見つめると、胸がキュッと締め付けられた。
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