不良リーダーの懸命なる愛

抱っこ

「…どうなんだよ?さっきから顔を背けてる、そこの二人組!!!」



「「……っ!!」」



「てめえらの顔も憶えてんダヨ!!あの時、コイツと一緒に居ただろうが!!!忘れたとは言わせねぇぞ!!?」


言われた二人の女の子は、よくよく見ると桜子さんとあの日一緒に居た女の子達だった!



た、確かに忘れられないよね……。



“地味” だの “ブス” だの結構な言われようだったからな、私…。



「……………っ。」


「それは…………。」


二人は口ごもってハッキリと言わない。



そんな二人に霧島くんの追求は続き……


「どうなんだよッッ!!!?」



「「っっ!!!」」



そして霧島くんの今の一喝が効いたのか、

二人のうちの一人が、涙声で叫んだ!




「そ、そうよっ!!」





!!!




「ちょっと!?アンタ何言って!!?」


桜子さんが驚愕した顔で、その子を見上げていた!!



「さ、桜子と相談して、それで………鳴瀬…さんと同高の…笹原って子に……………、 “鳴瀬咲希っていう女が、彼女ヅラして、霧島くんを独占してる。霧島くんは騙されてる。” とか言って、頼んじゃった方が……潰すの早いって……。霧島くんの為だったら、何でもする子だから……そいつを利用しないテは無い!………って。」


ポツリ、ポツリとその子が話していくにつれて、
桜子さんの表情が曇っていき、そしてついには泣き出してしまった…。



本当に、現実にそんな事あるなんて……。


信じられない気持ちだった。



「…………。」


霧島くんはただ黙って話を聴くと、彼女たちの様子をしばらく見ていた。




そして。




「咲希。」


「……………へ? ……あ!ハ、ハ、ハイィ~!!!」


唖然としていた私に、急に霧島くんが話しかけてきたので、
変な返事をしてしまった……。



「怪我、無いか?」


「え?!は、はい!!な、なんとも…。」


「良かった。立てるか…?」


「は、はい!立て…………………あ、あれ?」



こ、腰が抜けちゃって立てないっ!!?



「どうした?………まさか!!あいつらにヤられたのかッ!!?」


と、霧島くんがギン!と目を光らせ、桜子さん達の方を見る!!




ま、まずい!!




「違います!!!あの、ただ腰が……その………ぬ、抜けてしまって……。」


………って!!



それって、恥ずかしすぎるよおぉ~~~!!



私の顔がどんどん熱くなってくる…!


霧島くんとの久しぶりの再会なのに、
まさか腰が抜けてる状態なんてあり得ないよおぉぉ!!!!



羞恥心で顔が上げられないでいると……。



「わかった。……嫌かもしんねぇけど、少しの間だけ我慢して?」


「え?何のこと…」


と、言いかけた時には私の体は宙に浮いていた!!



「え!!?な、なに!?ちょっ、霧島くんッ!!!??」




こ、これって、




まさか、





あの有名な!!





おおおお姫様抱っこ!!!??




「やっぱ軽いな、咲希は!思ったとおり。」


「へ!!?思ったとおり!?」


「ん。…じゃあ行くか。」


「え!?あの、き、霧島くん?!!」



行くって何処に!?



っていうか、お姫様抱っこのまま行かないよね!!?



心の中で疑問を彼にぶつけていると、


「あ。ひとつ忘れてた。」


と言って霧島くんは、桜子さん達の方へ体を向けた!



「今回は見逃してやる。“俺は” な。だが、次は無いと思え…。」


すると桜子さんが泣きながら霧島くんに尋ねた。


「え?…ど……どういう……コト?」


「俺を敵にまわしたんだ。それがどういう意味か、これから知ることになるだろうよ。」


「え……?」


「要は、てめぇらがやった事が、そのまま自分らに返ってくる。それだけの事だ。それを後で知ることになる。スゲェ残酷だけどな…。」


「き、霧島く……!!」


桜子さんの呼びかけも虚しく、霧島くんは私を抱えたまま、その場を去って行ってしまった…。




最後に言った霧島くんの言葉の意味は、あまりよくわからなかったけど、
凄く重みがあった。


それに、これから桜子さん達が今まで通りの日常をおくれない事には私にもなんとなく伝わってきて、
一気に背筋が寒くなるのを感じた…!



桜子さん達は、
ミイラ取りのはずがミイラになってしまったのかもしれない…。


そう思ったら、これほど哀れに感じたことは正直無かった。
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