突発性ヴァンパイア・ガール!

うららとファイの血

振り返った時には、もう遅かった。


「アァ...甘イ...甘イ 香リ…!」


グッと首を絞めるように私の首に回された白い腕。


「なっ!?」


胸の下の辺りにも腕を回され、身動きが取れない。


恐る恐る見上げると、それは。


白い肌に、赤い瞳。


口から覗く、鋭い牙。


人間とはかけ離れた、その姿。


「吸血鬼がまだ隠れていたとはな」


吉崎君は舌打ちした。


「血ヲ クレ…!」


息を荒くする吸血鬼。


首に回っている腕の力が強くなる。


「いやっ!」


抵抗してもびくとも動かない。


息が、苦しい。


呼吸が、難しい。



「おい」


吉崎君が吸血鬼に話しかけた。


「そいつを離せ」


拳銃の銃口を、こちらに向けて。


「オマエ、ハンター カ?」


吸血鬼は吉崎君の方を見た。


「あぁ、そうだ」


「ナラバ、オマエハ 『コレ』ノ血ガ何ナノカ分カッテ イルダロウ?

『コレ』ハファイダ。

アノ貴重ナ ファイ ノ 血 ヲ 持ツ女ダ!」



吸血鬼は私のことを"コレ"と言った。


この吸血鬼は私のことを単なる獲物としか見ていないのだろう。




「俺にはこいつがファイだとかなんだとか、そんなことは一切関係ねぇ」




吉崎君は掠れた声で言った。




「こいつは人間だ。

それ以外の何者でもねぇよ」




掠れていて、決して大きい声ではないけれど、でも心のある強い口調だった。


< 40 / 119 >

この作品をシェア

pagetop