突発性ヴァンパイア・ガール!
「今、1人になりたいの!離して!」


私は軽く混乱状態に陥っていた。


暴れて必死に吉崎君から逃れようとしていた。



「今1人になって、どうするんだ」


吉崎君は静かに言った。


ハッとして私は暴れるのをやめた。


吉崎君は静かに、でも、はっきりとした口調で言った。


「今1人になったら、あんたは考え込むんだろ?それもくよくよと落ち込んで、マイナス思考だ。

だから今のあんたを1人にできない。


嫌われても、そばにいる」



吉崎君の言葉が、ぼろぼろになった心を満たしていく。


包み込んでいく。


その優しさが暖かかくて。


ぽろぽろ、ぽろぽろ、涙が溢れた。



「もう、分かんないよ!」



私は叫んでいた。

感情が溢れて、言葉は叫びになった。



「何を信じたらいいの?

クラスのみんなも、誰も私を信じてくれない、話も聞いてくれない!

亜美も侑也も嘘をついてた。

私を嫌ってた!


もう、何を信じたらいいか、分かんないよ…っ!」



最終的には泣いてしまった。

悲しいのか、苦しいのか、寂しいのか、やるせないのか、いろんな感情が入り混じってよく分からない。


吉崎君は黙ったまま聞いてくれていた。


「分かんないよ…!」


涙混じりの声は掠れていた。


泣き崩れるようにして私は座り込んだ。


吉崎君に腕を掴まれたままだったので、吉崎君も一緒にしゃがんだ。


涙がいくつもこぼれた。


こぼれては制服にいくつもしみをつくる。



吉崎君は私の腕を掴んでいる手とは反対の方で私の頭に手を乗せた。


「言っただろ、忘れるなって」


吉崎君はいつもと同じようにため息混じりに言った。


けれどどこか暖かいと感じるような口調でもあった。




「俺はあんたを信じてる」




私は目を見開いた。

涙だけが次々に溢れていった。


「んだよ、驚いた顔して。さっき言っただろうが。もう忘れたのか?」


吉崎君はいつも通りに私をバカにするような口調で言った。


「違うけどっ!」


忘れていたわけじゃない。

ただ、亜美や侑也のことでいっぱいいっぱいになって、言葉を思い出せずにいた。

せっかく伝えてくれた言葉が、心の中で埋もれていた。
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