現代のシンデレラになる方法



昴と付き合い始めて数か月、私達は一緒に住み始めていた。

お互い1Kに住んでいたため、新しく1LDKに引っ越しして。




「来月の誕生日どうする?」

ソファーに寝転がり、雑誌から目線を移すことなく聞いてくる昴。


誕生日と聞いて、思わず憂鬱な気持ちになる。

思えば2年位前だろうか。

自分の中で、30までのカウントダウンが始まったのは。

そしていよいよ来月その30へ到達するのだ。


あぁ、小学生の頃は、一生私は年を取らないんだと思っていた頃もあった。

今思えばどうしてそんな発想に辿り着くのか。

でも、こうして大人になっていくことが信じられなかった。


正直、今も少し信じられないでいる。

というか信じたくない。

自分がついに30の大台にのるなんて。


「……覚えててくれてありがとう。でも何もしてくれなくて大丈夫だから」

「え?」

「もう、お祝いする気になれなくて」


もう若いなんて言えない。

これからどんどん年を重ね、身体的に老化が始まっていく。

それはもう免れようのない現実。

きっと今までだったらこんなに思いつめるようなことはなかったと思う。


だけど……。

今は、自分より若い昴と付き合ってる。

年を追うごとに、彼と自分との違いを比べて実感させられていくのだ。

自分の老いを。そして昴への引け目を。


そんなことも相まって、その節目となる誕生日なんて憂鬱でしかない。


誕生日は自分が産まれた特別な日なのに。

小さい頃はあんなに誕生日が待ち遠しくてしょうがなかった。

だけど、今ではただ億劫なだけ。


< 165 / 196 >

この作品をシェア

pagetop