現代のシンデレラになる方法


「ねぇお兄ちゃん、行こうよーっ」

そう言って妹が俺の袖を引っ張る。

「行かないってば」

「お願いっ」

「もうこれで勘弁してくれ」

財布から映画代を差し出し渡した。

「わーい、お兄ちゃん大好きー」

それを受け取ると腕にぎゅっと抱き付いてきた。
そもそも俺と映画に行きたかった訳ではなく、ただお金を出して欲しかっただけのようだ。


「もうやめてっ。みーちゃんのばか、恥ずかしいことしないで!」

ひなたが顔を赤くして妹をぺしぺし叩きながら、俺からひっぺがす。

「先生、すいません」

「いいから、気にしないで行って来い」



2人が出かけ静かになった部屋。

俺は久しぶりの休日をソファーに座りコーヒーを飲みながら、テレビで撮っておいた映画を観る。

午後はどうしようか、ちょっと俺も出かけてこようか。
2人がいつ帰ってくるか分からないし。
ひなたには、俺の家にいつ来てもいいように合鍵を渡しているし。
夕飯までには戻ればいいだろう。

それにしても……。

映画を観ながら、テレビ台の上にほこり一つ落ちていないのに気が付く。
それは床の上にしても。

いつの間にやったのかどこもかしこも掃除が行き届いている。
俺は面倒であまりこまめにやれないのを、ひなたがやってくれているんだろう。

そういえばまた、冷蔵庫の中のタッパーが増えていた。
その中にはお惣菜が入っていて、俺が代金を払う前提で色々作り置きしてもらっているのだ。


こんなにしてくれなくていいのに。
こんなに俺に尽くしてくれたら、また自分の生活をおざなりになってしまうだろうに。





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