現代のシンデレラになる方法


「分かった、俺も行く」

「先生もですか?」

「帰りは俺が送るからな」

「でもそれじゃお酒飲めないんじゃ」

「別にいい」


それからは、相澤に酒を勧められても絶対に飲むな。
飲んでも2杯までだと口うるさく言いつけた。

だけど相澤はどうしてこんなに言われるのか分からないといった様子で。

頭をかしげながら、「は、はぁ」と気の抜けた返事をするものだから、本当に心配でしょうがない。


どうしてこんなに鈍いんだ。
どうしてこんなに危機感がなさ過ぎるんだ。


しかし、ここで相澤を責めたくなる気持ちをぐっと抑える。

今まではきっと、こういった男からやましい気持ちを向けられたことがなかったんだろう。

そう考えたら、鈍いのも致し方ない。



せっかく良い方に変わってきたのに、どうしてこんな男に目をつけられなきゃいけないんだ。






食事会当日。

病院主催とだけあって、規模も大きい。

ホテルの大きなレストラン会場を一帯貸し切って、ビュッフェ形式で行われる。

そこへ向かう道中、外科のナース軍団に捕まった俺は取り囲まれながら会場へ向かっていた。


「東條先生が食事会来るなんて珍しいですねっ」

「たまにはな」


ナース連中の鉄壁があるにも関わらず、他科の女医やナースからも声をかけられる。

どれもこれも、同じような台詞。
食事会なんて来るの初めてじゃないですか、珍しいですね、といったもの。

確かに病棟の飲み会もあまり参加しないし、こんな食事会なんて誘われても断ってきた。

そんなに俺が食事会に行くのがすごいことなのか。



あえてリハ科連中の前のテーブルを選んで席に着く。

そしてまた俺の席を囲むように、次々とナースが席を陣取っていく。

まるで椅子取りゲームみたいだ。


しかし、席に着いても女達は落ち着かない。


「何が食べたいですか?取ってきますよ」

「飲み物は何にします」

「いや、大丈夫だ」


医者だからといって特別扱いされるから、こういう集まりは来たくなかったんだよな。



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