現代のシンデレラになる方法
先生が戻ってきて、水のペットボトルを渡される。
「す、すいません、ありがとうございます……!。今、お金を」
「いらないって」
そう言ってバッグから財布を取ろうとしたところを止められる。
そっけない返事。
思わず涙ぐんでしまいぐっと堪える。
「あ、あの、私が何かしたなら言ってください、謝りますから。ただでさえ人をイラつかせること多いから、私また何か……」
「別にお前は何もしてない」
お前は……?
じゃ、一体何に怒ってるんですか?
怖くて直接聞けず、ボキャブラリーの少ない頭で慎重に言葉を選ぶ。
「あ、あの、えっと……っ、あのっ、」
「なんだよ、はっきり言えよ」
今まで一定のトーンだった声色が、唐突にはっきり苛立ちがこもったものになる。
思わずはっとして、次の言葉が出てこなくなってしまった。
視界が涙でいっぱいになる。
だけどここで泣いたら先生が気にするから、絶対に泣かない。
唇をきゅっとつぐんで、必死に耐える。
泣かない、泣かない。
泣いちゃダメ。
もう出てこないで……っ
そう、願うも溢れた涙はゆっくり頬を伝っていった。
意を決して震える声で聞く。
「ど、どうしてそんなに怒ってるんですか……っ?」
「……狙われてたの分からないのか?」
「……え?ど、どういうことですか?」
「リハ科の奴に酒煽られただろう?酔わされたの分からないのか?」
「酔わされた……?」
「あいつは、お前が酔ったところを狙って襲おうとしてたんだよ」
「わ、私をっ?ま、まさか、ありえないです……!」
きっと睨みつけられ、一瞬たじろぐ。
だけど、どうしても信じられない。
私なんかを、どうこうしようとしてたなんて。
「あ、あの。心配してくれるのは、と、とてもありがたいんですが……。わ、私なんか本当あ、ありえないです。そんな対象にもならないというか……」
先生は怖い位静か。
苛立ちを増長させているようだが、私の口は止まらない。
「む、むしろそんな風に考えるのも、なんだか失礼で……」
そう言ったところで、先生の苛立ちが頂点に達したのか、私の座っているシートの横にあるレバーに手をかけた。
その瞬間ガっと、後ろに倒れるシート。
私の体も一緒に後ろに倒されそうになって肘をつこうとしたところ、すかさず先生に肩を掴まれ押し倒された。