空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~
大樹の負担になりたくない。
だからあたしは、一生懸命に明るく振る舞った。
でも手術の不安を消し去ることは、できなかった。
大樹が大きな手術を受けるのに、なんの心配もせず笑って過ごすなんて無理。
だから泣き場所は、誰もいない自分の部屋。
それか、祐輔の隣だった。
同じ不安を抱える祐輔にだけは、何でも話せた。
「ねぇ祐輔、手術ってどうしても受けなきゃならないのかな?」
「受けなきゃ大樹は生きられないんだ。受けるしかない」
「あたし心配だよ。ものすごく怖いんだ。もしも、まんがいち手術が失敗・・・」
「よせ! 不吉なこと言うな」
「手術の日なんか、来なければいい。時間が止まってしまえばいいのに」
「ムチャ言うな。佳那に言われなくても、できるもんならオレがとっくに止めてる」
「・・・うっ・・・うぅ・・・」
祐輔はなにも言わず、あたしの涙をだまって受け止める。
祐輔だけが、あたしの気持ちを分かってくれた。
その存在にどれほど助けられたことか。
それでも手術の日が近づくにつれ、あたしの不安は増していく。
隠しきれない暗い気持ちに、心が押しつぶされそうだった。
ついに明日、大樹が県外に行く日。
あたしたち三人は、祐輔の部屋へ集まった。
あたしは今にも泣き出しそう。
でも大樹は、そんなあたしに向かって、明るい笑顔で意外なことを言う。
「佳那、ボクたち今すぐ結婚しよう」