人魚と恋

写真




交友関係の広い司路に頼み込んで、ゆうさんが通ってる学校の子を紹介してもらい、その子に頼んで、放課後制服を借りることになった。


その子の制服に身を包み、学校に忍び込む。

なんとなく、ゆうさんの様子が見たかった俺は始め職員室に行こうとしたけど、それはさすがにダメだと思って、どうしようか悩んだ。

そうだ、
ゆうさんと妹さんがよく話す場所で待ってたら来るかも。




ゆうさんの言っていた言葉を頼りに教室を探してみると案外楽に見つかった。

中に入ると、誰もいなかった。
がらんとした教室に1人、隅の席に座る。


こんな寂しいところで2人話してるのか…何も家族だろうに、こんなところで話さなくてもいいんじゃないのか、でも、ゆうさんから家族のことを聞いたことがない。
難しいお宅なんだろうか…




気が付いたら寝ちゃってたみたいだ。
あたりがさっきより暗くなってる。
でも、すぐ近くにゆうさんが座ってた。


「おはよう、忍び込んだの?
悪いやつだね〜」

すこし、妖しい笑いのゆうさん。


「お、起こしてくれたらよかったのに」

「ああ、ごめんね、妹と話してたの。」

「妹…?」


辺りを見渡しても、人影らしきものは見えない。

「見えない?
あの子は本当に目立たない子だからね
それに人見知りだから、航くんが起きた時に慌てて出てっちゃったの。
あ、ほらあそこ!ほらーおいで〜」

ゆうさんが指差した方向は教室の外の廊下の端。掃除用具入れがあった。
その影にでも隠れてるんだろうか。

「あーあ、なかなか来ないね
迎えに行ってくるよ」

ゆうさんが立ち上がろうとしたとき、廊下で音がした。

「あちゃー、これは逃げちゃったね
帰っちゃったみたい。
仕方ないね、私たちも帰ろっか。」

ゆうさんが立ち上がっておれを促す。


「あ、あの…今…いました…?」

怯えて聞く俺。
やっぱり妖しく笑ってゆうさんは言う。

「おかしなこと言うね〜
お化けじゃないんだからちゃんといるよー
目立たない子だから…
あ、写真、また見せるから、よく覚えておきなよ〜
そしたら流石にすぐ分かるよ?」

それにしたって、おかしいことが多すぎる…とにかくこの不気味な教室から離れよう。

「さっさとこんな教室から出ましょう」

ゆうさんのことを引っ張る。

「えー航くん失礼だなあ〜この教室だっていいんだよ?
昼間や放課後、校庭の声が少し聞こえるし、秋や春になると景色が良いし、夕焼けとか何気に綺麗だしね…」

ゆうさんが窓の外、遠くを見ながら思い出すように言った。
ゆうさんがここに来てそんなに日が経ってないはずだ。

「なんでゆうさんが知ってるんですか?」

「だって…高校生の時をほとんどここで過ごしたと言っても過言じゃないからね…」

ゆうさんはまだ遠くをぼんやり見ている。

「あ、ここゆうさんの母校でもあるんめすか?」

そう言ったところでゆうさんが俺の方を見た。

「えっ、やだなー違うよ。
ここは妹の母校だよ〜
さてさて、ささっと帰ろっか」
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