ﾍﾞﾗﾝﾀﾞから見える星

「せーちゃん！」


千香がいなくなった頃を見計らったように現れた葵は眉毛を下げて笑ってる。



「明後日…だろ？」


「うん。」


明後日…それは私が旅立つ日。


もうほとんどの荷物が送ってある。


けどそれは…私だけじゃない。


千香も音緒も拓海も実も。


みんな部屋の中は空っぽに近い状態だ。


そう，私たちの5人暮らしがとうとう終わりを迎える。


私たちは明日，あのﾏﾝｼｮﾝを出ていく。


それぞれの帰る場所へと帰るのだ。



「葵…
　あれからどう？」


“あれから”


あれは2月の半ば頃，たまたま葵と二人たとき葵の母親…旭さんと会ってしまった。


私を覚えていた旭さんは足を止めて話しかけてきた。


そのとき，葵を見て旭さんは『葵…』と口にした。


けど，旭さんはそのまま何も言わず立ち去ってしまった。


そしてその日から葵は今日まで学校にくることはなかったのだ。



「少しだけ，たまに俺のこと思い出すらしい。
　先生がそう言ってた。」


笑顔でそう言える葵はすごい。


私には出来ないもん。