苦手なあいつ
隆一と杏奈
隆一は久しぶりに街の図書館に来ていた。

本当は図書館じゃなくてもよかったんだ。一人になりたかっただけなんだ。

読みもしない本を適当に取ると、奥の椅子に座った。

ため息をつき顔を上げると、見覚えのある顔があった。

去年同じクラスだった杏奈だ。

隆一は杏奈が苦手だった。いつも自分がリーダーで、男なんか顎で使うやつだ。

でも、今日は様子が違う。向こうも本は広げているが読んではいない。ため息ばかりついている。

しかし、なぜここに居るんだろう。今は文化祭準備の真っ最中。コイツなら、クラスを仕切っているはずだ。

声をかけるべきか迷っていたら、目が合ってしまった。ここで無視するわけにもいかない。

「……久しぶり」

「ああ、隆一か……」

「なんだよ、元気ないじゃん、珍しいな」

「そっちこそ。顔色悪いよ」

「そうか、そうかもな」

「なんかあった?」

「まあ、いろいろ。そっちは?」

「うん、まあね……」

そのまま、お互いだまりこんでしまった。

もやもやした気持ちは一気に大きくなった隆一は、ちょっと聞いて欲しくなり、口を開いた。
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