薬品と恋心
「ふふ、そんなにかしこまらなくても大丈夫よ」
少女は書庫の中へと入って来た。
歩くたびにふわりとローズ・オットーの貴賓溢れる香りがして、書庫独特の匂いが彼女の周りだけ消えているような気がした。
少女は優雅な足取りで机に近づくと、本を一冊とりパラパラとめくった。
見ているというよりも、ただめくって眺めているだけのように見えた。
「ジーニアスに聞いたのだけど、古代薬に興味があるそうね」
「…はい」
彼女の雰囲気に圧倒されティアはそう答えるのがやっとだった。
「貴女の探しているものは何かしら…?」
艶やかな唇に指をあて、少女は妖艶な視線をティアに向ける。
その視線に目を奪われ、ティアは動くことが出来なかった。