薬品と恋心

「ん…?何か物音がしたような気がしたんだが…」



手をドアノブにかけたまま部屋から廊下へ足を踏み出さずにいるのか、扉は90度に開けられたままだ。


開けられた扉のまさしく裏側、そのかげにティアはいた。


張りつめた緊張が一瞬にして高まり、心臓はまるで早鐘のようにドクドクと胸を打ち叩く。


緊張のあまり荒くなる呼吸を必至に抑えて息を殺し、叔父がいなくなるのを待つ。



「時計?こんなものが気になるなど、神経が過敏になっているのか…まぁ明日は大事な日だからなぁ」



ティアは叔父の言葉を聞いて初めてそこに時計があったことを知った。


時計はカチ、コチと時を静かに刻んでいた。


「ふむ、ほかにも音がしていた気もするが…ハハッ、まさかと思うがティアが逃げたしたとかじゃないだろうな」



叔父のつぶやきにザッと背筋が凍ったような感覚に襲われる。


ここで見にいかれてはティアがいないことがバレてしまう。



(まずい…!)



だからといって、どうすることもできない。


ただひたすら叔父が部屋の中へ戻ってくれるのを願うのみだ。


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