躊躇いのキス
 
「でもビックリだよ……。
 あんなに仲がよかったのに、雄介に他に好きな人がいたとか言ってさ……」

「あ……」


残念そうにつぶやく智世に、そういえば……、と思い出した。

智世には、雄介と別れた直後に電話でその報告をしていて、
別れた原因は、雄介が他に好きな人が出来たから、と話していた。

その時のあたしも、確かにそう思っていたし、そのまま智世に話していたけど、その真相は違っていて……。


「え?違ったっけ?」


あたしの反応を見て、智世が首をかしげた。


正直、話そうか悩んだ。

こんな話をしたら、智世に呆れられるかもしれない。

だけど……


「……何か別の理由があるんだ?」

「………うん…」


いつもあたしと雄介の近くに一番いてくれた智世だからこそ、正直に話そうと思った。
 



「実は、ね………」


 
< 83 / 203 >

この作品をシェア

pagetop