独り言<あるOLの一日>
でも、そんな風にして向かえた37回目の誕生日は、今までと少し違っていた。

去年と何にも変わっていないこの毎日。

38歳になる来年もたぶん同じだろう。

ここまでは去年も感じたことだ。

ただ、『60歳まであと23年』と数えた途端、恐ろしくなった。

今まで生きてきた年月よりも遥かに短いなんて‥。

23年前の真奈美は中学生だった。

そして23年後は60歳である。

その時、果たして誰といるのだろう。

やっぱり独りなのだろうか‥。

以前にもそんな風に漠然と思った事はあったが、『あと23年』という妙に具体的過ぎる数字に60歳がまるですぐ其処に迫ってきているかのような悲しい気持ちにさせられた。

無性に寂しくて仕方なくなった。

明るい未来なんて自分には来ないのかもしれない‥

かつてない孤独感に襲われた。

どうしようもなくなって、枕に顔をうずめて声を押し殺しながら泣いた。

しかし、真奈美は、それでもやっぱりひきこもりになる勇気も、うつ病になるほど深刻にもなれず、翌朝にはちゃんといつもどおり起きて仕事にでかけていた。

真奈美には、毎日をひたすら「仕方ないから‥」「今は、止まるわけにはいかないから」とこなす以外に術がない。

だからといって、別に頑張っているつもりもない。

ただなんとなく「今、とりあえず」我慢すればきっとそのうち何か少しはいいことがあるはず‥。

とりあえずそう信じることが、真奈美にとっては生きることなのかもしれない。

毎朝目が覚めて、さわやかな朝とは到底無縁の超現実的な生活に、真奈美はどうしようもなくやり切れない気持ちになる。
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