AfterStory~彼女と彼の話~
 ヒデ子婆ちゃんと海斗さんが作る料理はどれも豪華で、味も美味しくて、お箸が進むスピードが落ちない。

「この魚の煮付け、身が厚いのに味がしっかりと染みていて、美味しいです」
「海斗が漁で捕って来たのよ」
「もう少しデカイ魚を引きたかったが、これはこれで美味いな」
「はい。都内じゃ食べられないくらいの厚さです」

 3人で囲む食卓の雰囲気はとても温かくて、此れからもこうして過ごせるようにしたいな。

 食事を終えると、海斗さんと一緒に台所に立って、食器を洗いはじめる。

「今日はありがとうな。婆ちゃん、喜んでいた」
「それなら良かったです。私もヒデ子婆ちゃんに会えて、嬉しいですから。漁師の皆さんは、お元気ですか?」
「相変わらず元気だ。あんたは、どうなんだ?」
「私は―…」

 食器を洗いながら、仕事のこと、一人でいるときのことを話して、会えなかった分を埋めるように話す。

 メールをするのも有りだけど、こうして直接会って話すのがいいな。

「よし、これで終わりだな。手伝ってくれて、ありがとう」
「どういたしまして。あっ、ちょっとここで待って下さい」

 危ない、危ない、チョコを渡さなきゃ。

 和室に戻ってバックにしまってある海斗さんへのチョコを取り出して、また台所に戻る。

「海斗さん、バレンタインのチョコです」
「ありがとう」

 海斗さんは頬をかきながらチョコを受け取り、綺麗に包装紙を解いていく。

「今年は時間がなくて、買った物になっちゃったんです」
「手作りだろうが、買った物だろうが、あんたからだというのが重要だ」

 どうしよう、絶対に頬が緩んで、しっかりしろ私。
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