AfterStory~彼女と彼の話~
 マンションの入口を入ると、受付にいる男性が私に気づいた。

「東雲様、お久しぶりです」
「お久しぶりです。彼(南山)から部屋で待っているようにと言われているので、通ってもよろしいですか?」
「勿論です。お待ちください」

 彰が住むマンションはセキュリティを重視しているので、部屋に向かうためには先ず受付の人が対応する形になっている。

 エレベーターホールにつながる扉の鍵の施錠が解かれる音が聞こえ、私は扉を開けて中に入った。

 そしてエレベーターに乗り込んで、彰の住む部屋の階数ボタンを押すとエレベーターは静かに上昇を始める。

 前に彰の部屋に来たのはいつごろだったかな?休みが合わなくてすれ違いが多いから、彰とゆっくり過ごせるのが嬉しいな。

 彰の部屋に入ると三毛猫が私の所に来て、足元をぐるぐると回っている。

「ただいま。出迎えてくれたんだね、ありがとう」
「にゃぁ…」

 三毛猫を抱きかかえて頬ずりすると、夜勤明けの疲れを癒やされる。

 動物の癒しパワー、凄いなぁ。

 三毛猫をリビングにあるソファの上に置いて、彰が帰ってくるまでに料理を作っておかなくちゃ。

「ご飯を炊いて、あとはお肉に調味料をひたして、と」

 スマホでレシピを見ながら料理の下ごしらえをして、炊飯器のスイッチを押して、リビングのソファに座って、膝の上に三毛猫を乗せて頭を撫でながら彰の帰りを待つ。

 冷蔵庫に視線を向けて、そこにいれている大事な物を忘れずにしなくちゃ。

 バレンタインのチョコ、彰に渡すために買ってきた。

 付き合うまでは片想いだったしチョコを上げることが出来なくて、初めてのチョコをあげれたときは嬉しかったなぁ。
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