AfterStory~彼女と彼の話~
 外から聞こえる雨音は弱くなることは無くて、その雨音に私たちの艶やかな声とベットの軋む音が交わる。

「幸雄さん」
「美空、美空っ」

 キスとキスの合間にお互いの名前を呼び続けるけど、会えなかった時間を埋めるにはキスだけじゃ足りなくて、好きです、大好きですと言葉に出したいのに、その隙を与えないように幸雄さんの動きは早くなるばかりで、ひんやりとしていた体はその動きに合わせて徐々に熱くなる。

 幸雄さんは更に腰を深く寄せて、余計意識を遠くへ運ぼうとした。

 意識を手放してしまったらまたいつこの部屋に来れるか分からないから、意識を保とうと幸雄さんの背中に爪を立てると、幸雄さんが唇をぎゅっと真一文字にして耐える表情が色っぽくて見惚れる。

「そんなにじっと見られると、照れるよ」
「わっ」

 視界がぐるっと反転して、私が幸雄さんを見下ろす体勢になったのは初めて。

「見下ろすのは慣れないです」
「そうかな?俺は新鮮だけど」
「んっ…」

 幸雄さんが右手を私の腰に移動させてをなぞるから、くすぐったくて体をよじる。

「まだ雨がやみそうにないね」
「そうで―…んっ」

 返事をしたいのに幸雄さんがゆっくりと動きはじめ、ベットの軋む音がそれに合わせて鳴り始めた。

 幸雄さんのベットは木製で、軋む音は最初は雨が降り始めのような小さな音だったのに、徐々に外で降り続けている大雨のように大きい音を出していく。

 そんなに動いてしまったら私たちを支えているベットの脚が壊れちゃうんじゃないかと思うけれど、幸雄さんの動きは強くなるばかりで、そして体が弓のようにしなったと同時に意識が途切れた。
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