AfterStory~彼女と彼の話~
翌日の金曜日、まだ寒いからブラウスの上にニットとジャケットを着て、タイツも厚手のものにした。

四つ葉出版社に出勤をして総務課に入ると、課長がマスク姿になっていた。

「課長、おはようございます。風邪ですか?」
「おはよう。急に寒くなったから、困ったよ」

私もマスクをして、風邪をひかないように気を付けなくちゃいけないな。

ミーティングをして、それぞれの仕事を始めた。

「郵便物を配布してきます」

総務課を出て3階へ移動して、高坂さんの専務室をノックする。

『どうぞ』
「失礼します」

専務室に入ると秘書がバックに書類を入れていて、高坂さんの姿は無かった。

「すいません、高坂さん宛の郵便物をお持ちしました」
「ありがとうございます。高坂は体調を崩し、今から病院へ向かう所なので預かります」
「最近は編集部の皆さんもマスク姿になっていましたし、風邪が流行っているんですね」
「そうなんですよ。高坂が体調崩すのは滅多にないので、わたくしも動揺してます」
「高坂さんにお大事にとお伝え下さい」
「はい」

私は秘書に郵便物を預けて専務室を出て、2階へ向かう。
ICカードを使って編集部に入ると、ファッション部には幸雄さんの姿は無くて、スポーツ部に珍しく荒木編集長の姿があった。

私は荒木編集長に近づくと、机の上には書類の束が沢山置かれている。

「荒木編集長宛の郵便物をお持ちしました」
「ありがと…」

荒木編集長は元々口数が少ない人なので気にはならないけど、それにしても書類の束が多すぎるような。

「荒木編集長、いた!今日は取材費の伝票について、とことん説明をしてもらいますからね!」
「駄目だ。こっちは原稿の進行を確認したいから、伝票は後だ」
「いつまでも荒木編集長がこないから、私たちの経理課だって困っているんですから、こっちが先です!」

編集部に経理課の人が入ってきてスポーツ部の人たちが言い合うのは、普段から荒木編集長が来ないことが原因なので仕方ないよね。

「荒木編集長、此れからは出勤した方が喧嘩はなくなると思いますよ」
「取材だから無理」

いつか経理の部長に怒られるかもと、そう想像した。
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