世界一遠距離恋愛
気になるあの子は人気者
重く空に広がる雲から、ちらつく雪。痛いくらいに冷たく吹き付ける風。
外に出るにはマフラーに手袋は欠かせない今日は高校二年生最後の三ヶ月の幕開け、三学期始業式。
「んー…さむ…」
冬休み、家族からの大ブーイングをよそ目にヒーターと炬燵の占領権を独占していたあたしにとって、初詣の時以来約一週間ぶりに踏み出した外の世界の寒さに全く適応出来ていない。無論、初詣の時だって寒くて寒くて約30分出発を遅らせたわけだけど。
それにしてもこの寒さ…本当に後四ヶ月で春は来るのだろうか。
今のこの気候からは、とてもじゃないけど春なんて訪れてくれやしないと思う。両脇に広がる桜の木々も丸裸だ。
「…あなた達も寒いよね?寒いのにこんな裸で…可哀想に」
ふと足を止めた時、真横に生えていたその木に他人行儀に話しかけてみる。家でいわばコタツムリと呼ばれる生き物と化していたあたしを見下すその木は少し呆れた顔をしているようにも見えた。
< 1 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop