世界一遠距離恋愛
世界一遠距離恋愛
「泣きながら貴女の名前を呼んでいてね、最後…薬を注射されて安らかに眠ったそうよ。」
「…そっかぁ。」
最後に会った日の夜、透は亡くなった。あの時透があたしに会いたいと言ったのは…自分の死を察したのだと花奏は言う。今日はお葬式が開かれて、あたしと花奏は学校を休んで参加している。お葬式とか出た事ないからよく分からなかったけど、もう一時間くらいは座ったままで、時々焼香に席を立つくらいしかしていない。
「…絵理子に明日も来いと言いながら…こんな形で会うなんて…透ったら本当にバカなんだから…。」
「花奏…。」
普段滅多に泣かない花奏が泣いている。ずっと一緒にいたもんなぁ…泣いて当然か。あたしもここ数ヶ月はずっと一緒にいたはずなんだけど…どうして涙が出て来ないのだろう。
「ねぇ絵理子…透の事、好き?」
涙でぐしゃぐしゃになった花奏があたしに聞いて来る。
「…うん、大好き。」
「今も?」
「当たり前じゃん。」
「そっかぁ…安心した。きっと透も今頃喜んでるはずよ。」
花奏はそう言ってあたしの頭を撫でる。真っ黒なスーツを着た花奏はいつもより一段と大人に見える。黒い服を着て来いと言われて咄嗟にワンピースを着て来たあたしと姉妹とか親子とかに見えてもおかしくないかもしれない。
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